「空き家問題」は社会的問題となっており、国はその対策として2024年に相続登記を義務化することとしました。ここでは、相続登記義務化の背景、目的、具体的な内容、および気を付けるべき点について説明します。
背景と目的
相続登記の義務化は、未登記の土地が増加し、所有者不明土地問題が深刻化する中で、その解決策として導入されました。所有者不明土地が増えると、公共事業や災害復興、土地の有効活用に支障をきたすことがあります。
また、親から受け継いだ土地・建物については「登記をする必要がある」という意識が相続人にない場合があり、結果として、登記簿を見ても書かれている人が存命なのか、(亡くなっていた場合に)誰が引き継いで、その人の住所はどこなのかもわからない状態になっていることが多くあります。
こうした状況への対策として、相続登記の義務化が施行されました。
具体的な内容
相続登記の義務化により、相続発生から3年以内に相続登記を行うことが義務付けられました。これを怠ると、罰則が科せられることになります。そこで気を付けなければならないのは、遺産分割協議が済んでいなくても、「親の土地を相続したことに気づいたとき」から3年以内に登記をしなければならないということです。
相続登記義務化の具体的内容は以下のとおりです。
- 申請義務者の指定: 相続登記の申請義務者は、相続人全員です。しかし、相続人のうち一人が代表して申請することも可能です。
- 申請期限: 相続が発生した日から3年以内に相続登記を完了しなければならず、これを過ぎると、過料が科せられる可能性があります。
- 必要となる書類
<法務局で取得>
- 相続登記申請書
- 相続不動産の登記事項証明書
<市区町村の役所で取得>
- 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までの連続したもの、全相続人分)
※法務局の「法定相続情報証明制度」を利用し、法定相続情報一覧図の写しを提出すれば、戸籍の添付が不要になります。この制度を利用する際には家系図のようなものを作る必要がありますが、専門家に依頼することも可能です。
- 被相続人の住民票除票
- 相続する人の住民票
- 全相続人の印鑑証明書
- 相続財産の固定資産評価証明書
<相続人全員で作成>
遺産分割協議書
相続登記義務化の趣旨
この政策が意図していることは、親から受け継いだ土地などについて、個別の土地や建物を誰のものするのかを、明確にしてもらいたい、ということがあると思われます。
例えば3人のきょうだいで土地を相続したときに、3分の1ずつ共有という形にして登記することは法律上問題はありません。
しかしその人たちが亡くなった後は二次相続が発生して、土地の権利者はどんどん増えていきます。そうなると土地の権利関係は複雑化する一方となり、管理や処分がままならなくなるのは自明です。
よって、一時的に共有状態にするとしても、最終的に土地の所有者はきょうだいのうちの誰にするのかをなるべく早い時期に決めることが必要です。
より望ましいのは元の土地の所有者が遺言を残しておくことです。遺産分割協議では相続人間で思いがすれちがったり、ぶつかったりして話し合いがうまくいかないことが往々にしてあります。
こうしたことを避けるためにも、土地などの所有者が、その不動産を配偶者やお子さんなど、誰に引き継ぐのかを遺言に書いておくことが望まれます。
遺言には主に、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。それぞれのメリットや留意点について、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
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