はじめに:もしもの時、家族に「命の決断」を背負わせますか?
「エンディングノートの書き方講座」第4回目です。 今回は、これまでの「事務的な情報」とは少し毛色が異なる、「医療・介護」について考えていきましょう。
あなたは、脳卒中で倒れて意識がなくなったり、重度の認知症で会話ができなくなったりした時、どのような医療や介護を受けたいか、決めていますか?
もし、あなたの意思が分からない場合、医師はご家族に問いかけます。 「人工呼吸器をつけますか?」「胃ろうを作りますか?」
この時、ご家族は「延命したら苦しむだけではないか?」「でも治療しないのは見殺しにするようで辛い…」と、答えのない問いに苦しみ、決断した後も「本当にあれで良かったのか」と長く自分を責めてしまうことがあります。
エンディングノートにあなたの意思を書いておくことは、そんなご家族の心の負担を軽くする、「究極の優しさ」なのです。
最も重要な問い。「延命治療」をどうするか
医療の項目で必ず書いておきたいのが、終末期医療(延命治療)についての希望です。 専門的な知識は必要ありません。以下のポイントについて、今の率直な気持ちを記してください。
病名の告知:
がんなどの重い病気にかかった時、真実(余命など)を告知してほしいか、家族にだけ伝えてほしいか。
延命措置の希望:
回復の見込みがないと診断された時、人工呼吸器や胃ろうなどの措置を望むか。
「自然なままに最期を迎えたい」のか、「1日でも長く生きられるようあらゆる治療をしてほしい」のか。
【ポイント】 「痛みの緩和(緩和ケア)は最優先してほしい」といった要望も重要です。これにより、家族は迷わず緩和ケア病棟などを選ぶことができます。
介護の希望:「どこで」お世話になりたいですか?
平均寿命が延びた今、介護は避けて通れない問題です。 「誰に」「どこで」お世話になりたいか、現実的な希望を書きましょう。
場所の希望:
「可能な限り自宅で過ごしたい」
「家族に迷惑をかけたくないので、早めに施設に入りたい」
費用のこと:
「私の年金と預貯金を使って、有料老人ホームの手配をしてほしい」と書いてあれば、ご家族は金銭的な遠慮なく、良い施設を探すことができます。
誰に託す?「キーパーソン」の指名
いざという時、医師やケアマネジャーと話し合って最終決定を下す人(キーパーソン)を誰にするか、指名しておきましょう。
通常は配偶者やお子さんになりますが、 「長男は遠方で忙しいから、近所に住む長女に任せたい」 「妻は判断が難しそうだから、弟に相談してほしい」 といった事情がある場合は、ノートに明記しておくことがトラブル防止になります。
もちろん、指名する相手には事前に「あなたに任せたい」と伝えておくことが大切です。
専門家のアドバイス:今の気持ちでOK。「日付」を忘れずに
医療や介護の希望は、年齢や健康状態によって変わるのが当たり前です。 元気なうちは「延命なんてしなくていい!」と思っていても、いざ病気になると「やっぱり孫の成人式までは生きたい」と思うかもしれません。
ですから、エンディングノートには「書いた日付」を必ず記入してください。 そして、誕生日やお正月など、定期的に見直しましょう。気持ちが変われば、二重線で消して新しく書き直せばいいのです。
「今の時点ではこう思っているよ」 その記録があるだけで、ご家族にとっては大きな道しるべとなります。
まとめ:自分らしく生き切るための「宣言」
今回は、少し重たいテーマでしたが、自分と家族を守るために避けては通れないお話でした。
延命治療の希望を書くことは、家族への「免罪符」になる。
介護の希望(自宅か施設か)と、費用の出どころを書いておく。
気持ちは変わってもいい。定期的に見直して更新する。
これを書くことは、死ぬ準備ではなく、「最期の瞬間まで自分らしく生きるための宣言」です。
執筆者 池上行政書士事務所 池上 功(池上行政書士事務所のホームページ)
