はじめに:あなたの「家系図」、家族は把握していますか?
「エンディングノートの書き方講座」第3回目です。 前回は少し大変な「お金・資産」について整理しました。今回は、「人(家族・親族)」について見ていきましょう。
「家族のことなんて、書かなくてもみんな知っているよ」 そう思われるかもしれません。しかし実はこのページは「相続手続きのスピードを左右する」と言えるほど重要です。
なぜなら、相続手続きは「相続人を確定する」ことから始まるからです。
まずは簡単な「家系図」を書いてみよう
多くのエンディングノートには「家系図」を書く欄があります。 難しく考える必要はありません。名前と続柄を線で結ぶだけで十分です。以下の人々について記入してみましょう。
- 配偶者・子供・孫
- 両親・祖父母
- 兄弟姉妹・甥姪
これを書いておくことで、ご家族が役所で戸籍謄本を集める際、「父の兄弟はこの人とこの人だから、この戸籍が必要だな」と当たりをつけることができ、手続きがスムーズに進みます。
【ポイント】 生年月日や、もし既に亡くなっている場合は「死亡日(命日)」も分かれば書いておきましょう。法要の予定を立てる際にも役立ちます。
「誰に知らせる?」連絡先リストには優先順位を
自分にもしものことがあった時、ご家族は悲しみの中で、葬儀の手配や親戚への連絡に追われます。 「誰に連絡すればいいの?」「どこまで呼べばいいの?」とパニックにならないよう、連絡先リストを作っておきましょう。
単なるアドレス帳ではなく、「グループ分け(優先順位)」をしておくのがコツです。
- グループA【必ず・すぐに連絡してほしい人】
- 親兄弟、子供、特に親しい親戚など。危篤の段階で連絡してほしい人もここに。
- グループB【葬儀には呼んでほしい人】
- 親しい友人、お世話になった知人、親交のある親戚。
- グループC【死亡連絡(ハガキ等)だけで良い人】
- 年賀状だけのやり取りの人、遠い親戚など。
「この従兄弟とは仲が良いから葬儀に来てほしい」「この親戚とは折り合いが悪いから呼ばなくていい」といった、あなたの「意思」を残せるのがエンディングノートの良いところです。
専門家からの助言:デリケートな関係こそ、書き残す勇気を
相続手続きの現場で、ご家族が最もショックを受けるのが、戸籍を取ってみて初めて「知らない親族」の存在が発覚するケースです。
- 前妻(前夫)との間のお子さん
- 認知しているお子さん
- 養子縁組をした人
これらの方々も、法律上は立派な「相続人」です。彼らの協力(署名・押印)なしには、銀行預金の解約も不動産の名義変更もできません。
もし、ご家族に伝えていない「特別な関係」がある場合は、ぜひエンディングノートに書き残してください。 事実だけでなく、「なぜそうなったのか」「どうしてほしいのか」というメッセージを添えておくことで、ご家族の心の整理を助け、無用なトラブルを防ぐことができます。これは、あなたにしかできない「家族を守るための最後の仕事」です。
おまけ:ルーツを伝えるチャンス
事務的なことばかりでなく、 「うちの先祖は〇〇県から来たらしい」 「家紋は〇〇だ」 「おじいちゃんはこんな仕事をしていた」 といった、ご家庭のルーツやエピソードを書くのもおすすめです。
普段の会話ではなかなか話さないことも、ノートを通じてなら伝えられます。それが、お子さんやお孫さんにとって、自分のルーツを知る貴重な宝物になります。
まとめ:人の縁を整理して、安心を手に入れる
今回は「家族・親族」について解説しました。
- 家系図は、相続手続きのガイドマップになる。
- 連絡先は「呼ぶ・呼ばない」のグループ分けをする。
- 言いづらい人間関係こそ、トラブル防止のために書き残す。
人間関係を整理することは、これまでの人生を振り返り、感謝の気持ちを再確認する作業でもあります。 大切な人たちの顔を思い浮かべながら、ペンを進めてみてください。
執筆者 池上行政書士事務所 池上 功(池上行政書士事務所のホームページ)
