はじめに:完璧な「財産目録」を作ろうとしていませんか?
「エンディングノートの書き方講座」第2回目です。
今回のテーマは、多くの方が頭を悩ませる「お金・資産」についてです。 「通帳の残高を全部調べて、株価をチェックして…ああ、面倒くさい!」と思ってペンを置いてしまう方が一番多いのが、このページです。
ここで、一つアドバイスがあります。 エンディングノートにおいては、「正確な金額(残高)」まで書く必要はありません。 なぜなら、残高は日々変動するからです。
最優先!「どこに・何が」あるかのリスト化
相続手続きの際、ご家族が最も困るのは「どこの銀行に口座があるのか分からない」ことです。通帳が見つからなければ、その財産は誰にも気づかれないまま、「休眠預金」として消えてしまう可能性すらあります。
以下の項目について、「金融機関名」と「支店名」だけでもリストアップしましょう。
| 項目 | ポイント |
| 預貯金:銀行名、支店名、口座の種類(普通・定期) | 「メインバンク」「年金受取口座」「引き落とし用」など、用途をメモしておくと、解約の優先順位がつけやすくなります。 |
| 有価証券: 証券会社名 | 最近は「電子交付」で郵送物が届かないケースも増えています。証券会社の名前だけでも必須です。 |
| 生命保険・医療保険: 保険会社名 | 保険は、葬儀費用などの当面の現金として非常に頼りになります。「証券の保管場所」も書いておきましょう。 |
【重要なこと】 金額は「約〇〇万円」といったざっくりしたメモで十分です。大切なのは「ここに私の財産があるよ」と知らせることです。
現代の落とし穴!「デジタル資産」は必ず書いて
最近、ご相談が急増しているのが「ネット銀行」や「暗号資産(仮想通貨)」の相続です。 これらは通帳も店舗もなく、スマホやパソコンの中にしか存在しません。あなたが書き残しておかない限り、ご家族が見つけ出すことはほぼ不可能です。
| おもな項目 |
| ネット銀行名・支店名 |
| ネット証券会社名 |
| スマホ決済の残高(〇〇Payなど) |
| ポイント残高 |
ログインIDやパスワードを直接書くのが不安な場合は、「IDを書いたメモを金庫に入れた」「エンディングノートの別冊に書いた」など、たどり着くためのヒントを記しておきましょう。
言いにくいけれど重要…「借金・ローン」について
お金の話には、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産もあります。 住宅ローン、カードローン、友人からの借入金、連帯保証人になっているもの…。
正直、書きにくい内容かと思います。しかし、これを隠しておくのが家族にとって一番の不幸になります。 なぜなら、借金があることを知らずに相続してしまうと、ご家族がその返済義務を負うことになるからです。
もし借金が多い場合、ご家族は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に「相続放棄」という手続きをする必要があります。その判断をするためにも、マイナスの情報は包み隠さず残してあげてください。それが家族を守る優しさです。
不動産は「権利証(登記識別情報)」の場所を
持ち家や土地をお持ちの方は、不動産の情報も記入します。 正確な地番などが分からなければ、毎年5月頃に役所から届く「固定資産税の納税通知書」の保管場所を書いておくだけでも、大きな手がかりになります。
また、重要な「権利証(または登記識別情報通知)」がどこにあるかも記しておきましょう。
まとめ:家族への「宝の地図」を作りましょう
今回の内容をまとめると、
残高は気にせず、「金融機関名」のリストを作る。
見えない「ネット資産」は必ず書き残す。
「借金」こそ、家族を守るために正直に書く。
このページが埋まれば、エンディングノートの役割の8割は果たしたと言っても過言ではありません。 一度に全部書こうとせず、「まずは銀行口座だけ」「今日は保険のことだけ」と、少しずつ埋めていってください。
執筆者 池上行政書士事務所 池上 功(池上行政書士事務所のホームページ)
