はじめに:エンディングノート、買ったままになっていませんか?
「いつかは書かないと…」と思って本屋でエンディングノートを買ったものの、最初のページを開いたまま、あるいは引き出しの奥にしまったままになっていませんか?
エンディングノートは、ご自身の想いを整理し、残されたご家族の負担を減らすための「魔法のノート」です。しかし、いきなり「資産」や「葬儀の希望」から書こうとすると、調べることも多くて疲れてしまいます。
そこで今回から全5回にわたり、「これなら書ける!エンディングノートの書き方講座」をお届けします。
第1回のテーマは、「自分自身の基本情報」です。 「自分の名前や住所なんて、書かなくても分かるよ」と思われるかもしれません。ところが、「書いておかないと家族が困るポイント」があるのです。
なぜ「基本情報」が必要?相続手続きのカギは「正確さ」
家族はあなたのことをよく知っています。しかし、いざ役所や銀行で手続きをする段になると、「正確な情報」が分からずに立ち往生してしまうことがよくあります。
特に重要なのが以下の項目です。これらは、ノートの最初のページにしっかりと記入しておきましょう。
- 氏名(戸籍上の文字)
- 普段は「斉藤」と書いているけれど、戸籍上は「齋藤」だった、というようなケースです。金融機関の手続きは、一文字違うだけで通らないことがあります。
- 生年月日
- 西暦だけでなく、和暦(昭和〇年など)も併記しておくと、役所の書類記入時に家族が助かります。
- 【最重要】本籍地・筆頭者
- ここが一番のポイントです。 運転免許証から本籍地の記載が消えた今、ご自身の正確な本籍地(番地まで)を即答できる方は意外と少ないものです。
- 過去の記事でもお伝えした通り、相続手続きに必要な「戸籍謄本」を集めるには、この「本籍地」の情報が不可欠です。これさえ分かれば、ご家族の手間は劇的に減ります。
もしもの時に役立つ!書いておくべき「体のこと」
基本情報は、死後の事務手続きのためだけではありません。救急搬送されたり、介護が必要になったりした際、あなたを守るための情報にもなります。
- 血液型
- アレルギーの有無(薬・食品)
- 既往歴(過去にかかった大きな病気)
- 常用している薬
- かかりつけ医
- 宗教・宗派
- 葬儀の際に重要になります。「特にない」「無宗教」の場合も、その旨を書いておくと家族は迷いません。
専門家のアドバイス:スマホやパソコンのことも忘れずに
現代のエンディングノートならではの項目として、ぜひ加えていただきたいのが「デジタル機器の情報」です。
- 使用しているスマートフォン・パソコンの機種
- ログインパスワード(または解除パターン)
中身を見られたくない場合は、「パスワードを書いた紙の保管場所」だけでも構いません。 最近は、スマホが開けないと、友人への連絡先が分からないだけでなく、ネット銀行の口座があるかどうかも分からない…という「デジタル遺産」のトラブルが急増しています。 まずは「私はこれだけの機器を使っています」というリストを作るだけでも、大きな手助けになります。
おまけ:簡単な「自分史」を書いてみよう
基本情報のページには、学歴や職歴、結婚記念日などを書く欄があることが多いです。 事務的に埋めるだけでなく、 「〇〇年に結婚、ハワイへ新婚旅行」 「〇〇年に部長に昇進、大変だったけど楽しかった」 など、一言メモを添えてみてください。
これだけで、無機質なデータが、ご家族にとっての「読み返したくなる思い出のページ」に変わります。書いているご自身にとっても、人生を振り返る良い時間になるはずです。
まとめ:まずは最初の1ページを埋めてみましょう
いかがでしたか? 「自分のこと」なら、何も調べなくても、今すぐに書けるはずです。
- 戸籍通りの正確な氏名を書く
- 本籍地を調べて書いておく(免許証には載っていません!)
- スマホのパスワードなどのデジタル情報も忘れずに
まずは最初の1ページが埋まると、「書けた!」という達成感が生まれ、次のページに進む意欲が湧いてきます。 次回は、少し本格的な内容、「第2回:お金・資産について」を解説します。
執筆者 池上行政書士事務所 池上 功(池上行政書士事務所のホームページ)
