預金が100万円以下の場合のゆうちょ銀行の相続手続きについて

遺言・相続

はじめに

ご家族が遺されたゆうちょ銀行の預金。いざ相続手続きをしようと調べてみたら、「戸籍謄本を出生まで遡って集めて…」「相続人全員の実印と印鑑証明書を揃えて…」と、その大変さに驚いた方も多いのではないでしょうか。預金額が少額であれば手続きをすること自体、躊躇されるかもしれません。

しかし、ゆうちょ銀行では、相続する預貯金の合計額が100万円以下の場合、通常の払い戻し手続きを簡略化できる特例的な取り扱いがあります。

通常手続きとの違いは?「戸籍謄本」の範囲が大幅に縮小

この手続きの最大のメリットは、必要書類の範囲が狭まることです。

《通常の相続手続き》

原則、亡くなった方の「出生から死亡まで」の全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)が必要。

《少額相続手続き(残高100万円以下の場合)》

亡くなった方の「死亡の事実」と、「手続きをする代表相続人との関係」がわかる戸籍謄本だけでOKな場合があります。

つまり、戸籍を過去に遡って集める作業が、多くの場合で不要になるのです。これにより、手続きにかかる時間も費用も大幅に削減できます。

少額相続手続きの流れと必要書類

では、具体的な手続きの流れを見ていきましょう。

Step 1:窓口で相談

まず、お近くの郵便局の貯金窓口へ行き、口座名義人が亡くなったことを伝えます。その際に、「相続する貯金の残高が少ない見込みなので、簡素化された手続きで進めたい」と伝えましょう。

窓口で残高の概算を確認し、専用の「相続手続請求書(兼 貯金等払戻請求書・名義書換請求書)」などを受け取ります。

Step 2:必要書類を準備する

【主な必要書類(代表相続人が手続きする場合)】

・亡くなった方の死亡の事実が記載されている戸籍謄本(または除籍謄本)

・ご自身が相続人であることがわかる戸籍謄本

(上記の戸籍謄本で関係性が証明できれば、1通で済むこともあります)

・手続きをする代表相続人の印鑑登録証明書

・手続きをする代表相続人の本人確認書類(運転免許証など)

Step 3:書類を提出し、払戻しを受ける

全ての書類が準備できたら、窓口に提出します。書類に不備がなければ、通常の相続手続きと同様に、後日指定した口座に払戻金が振り込まれます。

注意点

《残高の上限はあくまで「目安」》

「100万円」という金額は、ゆうちょ銀行が定めている目安です。相続の状況(相続人の関係性など)によっては、100万円以下でも通常の手続きを求められる場合があります。

《相続人間で合意が取れていることが大前提》

この手続きは、代表相続人が責任をもって行う形で進めます。そのため、事前に他の相続人全員から「代表して手続きを進め、払戻金を受け取る」ことへの同意を得ておくことが不可欠です。

《他の金融機関では基準が異なる》

この取り扱いは、あくまでゆうちょ銀行のものです。他の民間金融機関では、独自の基準(例:50万円以下など)を設けている場合や、このような制度自体がない場合もあります。

まとめ

最後に、今回のポイントをまとめます。

・ゆうちょ銀行の相続預金が100万円以下なら、手続きが簡単になる可能性がある。

・最大のメリットは、面倒な「出生までさかのぼった故人の戸籍等収集」が不要になること。

・事前に他の相続人全員の同意を得たうえで、相続人代表者が手続きを進めること。

この制度を上手に利用して、費用や手間の負担を減らし、最後まで着実に手続きを完了させましょう。手続きに不安があれば、いつでも当事務所へご相談ください。

執筆者 池上行政書士事務所 池上 功(池上行政書士事務所のホームページ

事務所概要

事務所名池上行政書士事務所
代表行政書士池上 功
<保有資格>
・行政書士(池上行政書士事務所)千葉県行政書士会 第25101381号
・遺品整理士
・宅地建物取引士
・日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
電話090-8112-0696
FAX04-7130-6158
所在地千葉県柏市若柴226番地44中央141街区KOIL TERRACE6階
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