はじめに
故人が遺した品々を整理していると、タンスの奥や古いアルバムの間から、古びた「郵便貯金 定額貯金証書」が出てきたが、これは払い戻しができるのか・・・。
ご安心ください。 その証書は、たとえ満期から長い年月が経っていても、故人が遺してくれた価値ある「財産」である可能性が非常に高いです。
この記事では、そんな“眠っていた資産”を発見した時のための、具体的な手続き方法とよくある疑問について、Q&A形式で専門家が分かりやすく解説します。
なぜ古い郵便貯金でも大丈夫?知っておきたい「時効」の話
多くの方が最初に心配されるのが「時効」です。
確かに、一般的な銀行預金には時効の考え方があります。そして、2007年10月の郵政民営化前に預けられた定額郵便貯金なども、法律上は満期から20年2ヶ月が経過すると、預金者の権利が消滅する、と定められていました。
しかし、ここからが重要なポイントです。 現在ゆうちょ銀行では、この権利が消滅したとされる貯金についても、証書があり、正当な相続人であることが確認できれば、払戻しに応じてくれます。
まずは何をすべき?手続きの3ステップ
では、実際に証書を見つけたら、何から始めればよいのか、順番に見ていきましょう。
- Step1:証書を持って、ゆうちょ銀行の窓口へ行く まずは、発見した証書そのものと、ご自身の本人確認書類(運転免許証など)を持って、お近くのゆうちょ銀行(または郵便局の貯金窓口)へ行きましょう。
- Step2:「現存照会」と相続手続きの申し出をする 窓口で「名義人である〇〇(故人名)が亡くなり、遺品からこの証書が出てきたので、相続の手続きをしたい」と伝えてください。 銀行は、その証書の貯金が現在どうなっているか(有効かどうか)を調べる「現存照会」という手続きに入ります。同時に、通常の相続手続きの申し出も行い、今後の流れについて説明を受けます。
- Step3:調査結果を待ち、正式な相続手続きへ進む 古い契約の場合、ゆうちょ銀行内での調査が必要になることが多く、結果が出るまで数週間から1ヶ月程度かかることもあります。 調査が完了すると、連絡があり、正式な相続手続き(これまでの記事で解説した、戸籍謄本などを提出する手続き)に進むことになります。
よくある質問(Q&A):こんな時どうする?
ここからは、古い証書の相続で特によくある疑問について、Q&A形式でお答えします。
Q1. 証書の名義が、母の「旧姓(結婚前)」のままです。
A1. 心配ありません。亡くなった方の「氏名の変更履歴がわかる戸籍謄本(除籍謄本)」を提出することで、証書の名義人と亡くなった方が同一人物であることを証明できます。
Q2. 証書に書いてある住所が、何十年も前の住所です。
A2. 亡くなった方の「住所の変遷がわかる『戸籍の附票』または『住民票の除票』」を取得すれば、住所がつながり、問題なく手続きを進められます。
Q3. 届出印がどのハンコか分かりません。たぶん紛失しています。
A3. 相続手続きでは、証書を作成した当時の届出印は使いません。代わりに、相続人全員の「実印」と「印鑑登録証明書」を使って手続きを進めますので、昔のハンコがなくても全く問題ありません。
Q4. 証書がかなり破損しています。
A4. 証書の記号番号や氏名、金額といった重要事項が判読できる状態であれば、そのまま手続きできる可能性があるので、まずは窓口で相談してみましょう。
まとめ
最後に、今回のポイントをまとめます。
- 遺品から出てきた古い証書でも諦めない!払戻しできる可能性は高い。
- まずは現物を持ってゆうちょ銀行の窓口へ相談に行くのが第一歩。
- 旧姓や届出印不明でも、戸籍謄本などの必要書類があれば大丈夫。
故人が大切にしまい、遺してくれた、思いがけない贈り物かもしれません。手続きは少し手間がかかるかもしれませんが、眠っていた財産を相続人の今後のために活用しましょう。
相続手続きを進める中でご自身で進めるのが難しいと感じた際は、いつでも私たち専門家にご相談ください。
執筆者 池上行政書士事務所 池上 功(池上行政書士事務所のホームページ)