ゆうちょ銀行の相続手続き|必要書類と戸籍謄本の集め方で迷わないために

遺言・相続

多くの方が利用されているゆうちょ銀行の相続手続きでは、たくさんの書類が必要となります。中でもみなさまご苦労されるのが「戸籍謄本」の収集です。「どこまでの範囲を集めればいいの?」「昔の戸籍ってどうやって取るの?」といったご相談は、私たち専門家にも数多く寄せられます。

この記事では、相続手続きの専門家が、ゆうちょ銀行の相続でつまずきがちな「必要書類」について、特に戸籍謄本を中心に、わかりやすく解説します。

なぜ「出生まで遡る」戸籍謄本が必要なの?

まず、多くの方が疑問に思う「なぜ亡くなった人の戸籍を、生まれるまで遡って全部集めなければならないのか?」という点からご説明します。

ゆうちょ銀行をはじめとする金融機関は、お客様の大切な財産を預かっています。そのため、相続手続きにおいては「法的に正当な相続人」以外の方に、誤って預金を払い戻してしまう事態を絶対に避けなければなりません。

戸籍を出生まで遡ることで、現在の戸籍謄本だけでは分からない、すべての相続人を正確に確定することができます。

つまり、銀行にとって戸籍謄本の束は「この人たち以外に相続人はいません」という公的な証明書の役割を果たしているのです。少し手間がかかる作業ですが、相続を正確かつ公平に進めるための非常に重要なステップだとご理解ください。

【重要】ゆうちょ銀行の相続で必要な戸籍謄本はこれ!

それでは、具体的にどの範囲の戸籍謄本が必要なのか、結論を明確にお伝えします。ゆうちょ銀行の相続手続きでは、原則として以下の2種類の戸籍謄本が必要です。

【ゆうちょ銀行の相続で必要な戸籍謄本リスト】

被相続人(亡くなった方)の「出生から死亡まで」の連続したすべての戸籍謄本

これには、現在の「戸籍謄本」のほか、婚姻や転籍などによって新たに戸籍が設けられる前の「除籍謄本」や、法改正で様式が変更された前の「改製原戸籍謄本」も含まれます。

相続人全員の「現在」の戸籍謄本

相続人の方がご存命であることを証明するために必要となる戸籍謄本です。

有効期限は発行から6ヶ月以内がひとつの目安となりますので、手続きまで時間を要する際には、取得するタイミングにも気を付けましょう。

戸籍謄本だけじゃない!ゆうちょ銀行の相続・必要書類一覧

戸籍謄本と並行して、その他の必要書類も準備を進めましょう。以下に一般的な書類のリストをまとめました。

【ゆうちょ銀行で取得する書類】

・相続手続請求書

 ~ゆうちょ銀行の窓口で受け取る、手続きの中心となる書類です。

【役所などで取得する書類】

・被相続人(亡くなった方)の住民票の除票 または 戸籍の附票

 ~最後の住所地を証明するために必要となります。

・相続人全員の印鑑登録証明書

 ~遺産分割協議書などに押印した印鑑が、本人のものであることを証明します。こちらも発行後6ヶ月以内が一般的です。

【状況によって必要になる書類】

・遺産分割協議書

 ~(遺言書が遺されていなかった場合などに)相続人全員で遺産の分け方について相続人間で合意したことを証明する書類です。相続人全員の署名および実印での押印が必要となります。

・遺言書

 ~亡くなった方が遺言書を遺していた場合に必要です。自筆の遺言書の場合は、家庭裁判所での「検認」という手続きが必要になることがあります。

・相続放棄申述受理証明書

 ~相続を放棄した人がいる場合に、家庭裁判所から発行される書類です。

以上について、ご自身の状況に合わせて、どの書類が必要になるかチェックしてみてください。

戸籍集めが大幅に楽になる「広域交付制度」とは?

「戸籍謄本は、亡くなった方の本籍地を一つ一つ調べて、各役所に郵送で請求しなければならず、時間も手間もかかる…」 かつては、これが当たり前でした。

しかし、2024年3月から「戸籍の広域交付制度」がスタートし、戸籍集めの常識が大きく変わりました。 以下、ポイントごとに見ていきましょう。

【ポイント①】最寄りの役所でまとめて請求OK!

この制度の最大のメリットは、亡くなった方の本籍地が全国各地に点在していても、お住まいの市区町村役場の窓口で、原則として一括で請求できることです。

これまでのように、最後の本籍地から一つずつ過去へ遡って郵送請求を繰り返す…という手間が、大幅に軽減されました。

【ポイント②】利用できる人と必要なもの

非常に便利な制度ですが、誰でも利用できるわけではありません。請求できる人、窓口に持参する必要があるものを必ず確認しておきましょう。

  • 請求できる人:
    • 本人
    • 配偶者
    • 直系尊属(父母、祖父母など)
    • 直系卑属(子、孫など)
  • 必要なもの:
    • マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど、官公署が発行した顔写真付きの身分証明書

【重要】 健康保険証や年金手帳など、顔写真のない身分証明書では請求できません。 必ず顔写真付きのものを持参してください。

【おさえておきたい注意点】

利用にあたっては、いくつか注意点もあります。

  • 代理人・郵送請求はできません: 専門家(司法書士など)による職務上請求や、ご家族からの委任状による代理請求は、この制度の対象外です。郵送での請求もできません。
  • 兄弟姉妹の戸籍は請求できません: 相続人が兄弟姉妹になるケースでは、この制度で兄弟姉妹の戸籍を取得することはできません。その場合は、従来通り本籍地の役所へ直接請求する必要があります。
  • 一部、対象外の戸籍があります: コンピュータ化されていない一部の古い戸籍(改製原戸籍など)は、広域交付の対象外となる場合があります。その際は、本籍地の役所へ直接請求が必要です。
  • 発行に時間がかかることがあります: 請求する戸籍の数が多い場合、当日のうちに交付されず、後日再訪が必要になるケースもあります。時間に余裕をもって手続きに行きましょう。

まとめ

今回は、ゆうちょ銀行の相続手続きに必要な書類、特に戸籍謄本について詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ると、

戸籍は、亡くなった方の「出生から死亡まで」のすべてと、相続人全員の「現在のもの」が必要。

印鑑証明書や住民票の除票なども忘れずに。必要書類リストで抜け漏れを防ぎましょう。

戸籍集めは「広域交付制度」を使えば最寄りの役所で一括請求が可能に。

相続手続きにおける書類集めは、時間も手間もかかる大変な作業です。しかし、これが相続手続きの大きな山場であり、ここを乗り越えれば手続きは大きく前進します。一つずつ着実に進めていきましょう。

相続手続きでのお困りごとは、お気軽に当事務所にご相談ください。

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・行政書士(池上行政書士事務所)千葉県行政書士会 第25101381号
・遺品整理士
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