1-1. 相族税は「お金持ちだけの税金」ではない!?
相続税と聞くと、「ドラマに出てくるようなお金持ちや、広いお屋敷に住んでいる人の話」で、自分には関係ないと感じる方も多いのではないでしょうか。
ところが、2015年(平成27年)に法律が改正され、相続税がかかるかどうかのボーダーラインが引き下げられたこともあり、一部のお金持ちの人だけに関わる話ではなくなりました。
この改正により、以前なら相続税とは無縁だったような一般的なご家庭でも、課税対象となるケースが増えてきたのです。
例えば、「都心やその近郊にマイホームを持っている」「長年コツコツと貯蓄をしてきた」というだけで、相続税の申告が必要になる可能性は十分にあります。
実際に、国税庁のサイトによると、亡くなった方のうち相続税の課税対象となった方の割合は、近年約10人に1人の割合で推移しているとあります。これは決して他人事ではない数字と言えるでしょう。
1-2. すべての人が使える非課税枠「基礎控除」とは
では、どのような場合に相続税がかかるのでしょうか。その際にまずおさえておきたいのは、基礎控除という制度です。
基礎控除とは、「亡くなった方の財産がこの金額以下であれば、相続税は一切かからず、税務署への申告も不要です」という、いわば国が設けた非課税のボーダーラインのことです。
この基礎控除額は、次の簡単な計算式で計算することができます。
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
「法定相続人」とは、法律で定められた、亡くなった方の財産を受け取る権利のある人のことです。一般的には、配偶者(夫や妻)や子供たちをイメージしてください。
この法定相続人の数が多ければ多いほど、600万円ずつ非課税枠が増えていく仕組みです。
▼ 法定相続人の数ごとの基礎控除額(早見表)
法定相続人の数 | 計算式 | 基礎控除額 |
1人(例:配偶者のみ) | 3,000万円 + (600万円 × 1人) | 3,600万円 |
2人(例:配偶者と子1人) | 3,000万円 + (600万円 × 2人) | 4,200万円 |
3人(例:配偶者と子2人) | 3,000万円 + (600万円 × 3人) | 4,800万円 |
4人(例:配偶者と子3人) | 3,000万円 + (600万円 × 4人) | 5,400万円 |
つまり、亡くなった方が遺した財産の合計額が、この基礎控除額を「上回る」場合に、相続税の申告と納税の義務が発生するのです。
1-3. 【簡単チェック】我が家の相続税、かかる?かからない?
それでは、具体的な家族構成と財産で、相続税がかかるかどうかを確認してみましょう。
【ケース1】相続税がかからないご家庭の例
家族構成:亡くなった父、母(配偶者)、子供2人
⇒ 法定相続人は、母・子供2人の合計3人です。
<財産額>
財産 | 金額 |
自宅の土地・建物 | 2,500万円 |
預貯金 | 1,200万円 |
自動車等 | 100万円 |
財産合計 | 3,800万円 |
《計算》
まず、このご家庭の基礎控除額を計算します。
3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円
財産合計額と基礎控除額を比較すると、
財産合計 3,800万円 < 基礎控除額 4,800万円
《結論》
⇒財産の合計額が基礎控除額を下回っているため、このケースでは相続税の申告も納税も一切不要です。
【ケース2】相続税がかかるご家庭
家族構成:亡くなった父、母(配偶者)、子供1人
⇒ 法定相続人は、母・子供1人の合計2人です。
<財産の合計額>
財産 | 金額 |
自宅の土地・建物 | 4,500万円 |
預貯金 | 800万円 |
自動車等 | 100万円 |
財産合計 | 3,800万円 |
《計算》
・まず、このご家庭の基礎控除額を計算します。
3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円
・次に、財産合計額と基礎控除額を比較します。
財産合計 5,800万円 > 基礎控除額 4,200万円
《結論》
⇒財産の合計額が基礎控除額を1,600万円(5,800万円 – 4,200万円)上回っています。このため、このケースでは相続税の申告と納税が必要になります。
※実際に納める税額は、この1,600万円に直接税率をかけるわけではなく、法定相続分で分割した上で計算しますし、相続税の配偶者控除という制度もありますが、ここではまず「申告が必要」という点を押さえておきましょう。
【まずはここから!】
相続税発生有無の確認の第一歩は、「①我が家の法定相続人は何人か?」を把握し、「②大まかな財産(自宅、預貯金など)はいくらくらいか?」を計算して、基礎控除額と見比べてみることです。もし財産が基礎控除額を超えそうであれば、相続税の対策を考えていく必要があります。
※「財産」には、預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。また、生命保険金など一部の財産には、この基礎控除とは別に非課税枠が設けられている場合があります。
相続に関しては、税金以外にも知っておくべきことがいろいろとあります。まずは相続に関してご不明な点があれば当事務所にお気軽にご相談ください。
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