遺言執行者の選任とその権限について

遺言・相続

遺言の執行に際しては、遺言執行者が選任されていると手続きが円滑に進みやすくなります。ここでは遺言執行者の選任やその権利義務について解説していきます。

遺言執行者の選任

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために関係者を代表して手続きを行う人のことです。遺言執行者は1人、または複数人どちらでも選任することができます。

遺言者は、遺言で遺言執行者を指定するか遺言執行者の指定を第三者に委任することもできます。遺言者または委任された第三者が遺言執行者を指定した場合は、指定された人が遺言執行者として遺言を執行します。

遺言執行者がいない場合、または死亡や辞任によって遺言執行者がいなくなった場合には、遺言書がない相続手続きと同様に相続人が手続きを行います。

相続人が相続手続きを行う場合は、専門家などの第三者に手続きを委任することができます。相続人が遺言執行者に指定されている場合でも遺言の執行を委任することができます。

遺言執行者の権限

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利および義務があります。

具体的権限内容

① 遺言の検認

② 遺言相続財産による認知

③ 推定相続人の廃除およびその取り消し

④ 相続人および相続財産の調査

⑤ 相続財産目録の作成

⑥ 相続財産の管理

⑦ 銀行口座などの解約、預貯金払戻し

⑧ 相続人への財産引き渡し

⑨ 株式や自動車の名義変更

⑩ 不動産の登記申請、遺贈、寄付

権限内容についての補足

かつては、遺言執行者には、法律上は、被相続人の預貯金の解約および払い戻しの権限はありませんでした。(一方で、実務としては解約および払い戻しが認められていました)

これらについても、民法改正によって、遺言執行者に権限があることが明文化されました。

遺言執行者は、遺言の執行に必要な範囲で遺産分割協議に関与することができます。

相続人が遺産分割協議で遺言の内容と異なる分割方法で合意する場合には遺言執行者が同意する必要があります。(遺言執行者は基本的に遺言の内容を尊重する必要があります)

相続人が遺留分の侵害を主張した場合は、遺言の執行を中止すべきかが問題となります。

令和元年の民法改正によって、遺留分侵害請求において、その権利は金銭債権であって遺贈の効力には影響がないため、原則として遺言執行者は遺言を内容どおりに執行すればよく、執行を中止する必要はないことが明確になりました。

主な遺言執行者の義務

・任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知する義務がある

・相続人および相続財産の調査を完了したときは、遅滞なく相続財産目録を作成して、相続人に交付する義務がある

(従来は、法律の専門家ではない相続人などが遺言執行者に就任した場合、通知をしないことが一般的でしたが民法の改正により、通知が義務化されました)

・相続財産に関する金銭その他の物品を受け取った場合、または果実を収取した場合は、相続人に引き渡す義務があり、遺言執行者の名で権利を取得した場合は相続人に移転する義務がある

・遺言執行者は、遺言執行業務に当たる間、相続人から問い合わせがあったときは、業務の処理状況を報告する義務がある

また業務を終了した後は、遅滞なく、業務の経過および結果を相続人に報告する義務がある

遺言の執行について、不明な点等あれば専門家に相談されることをお勧めします。

当事務所では初回は無料でご相談に応じます。

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