相続時精算課税制度のメリットとデメリットについて

遺言・相続

生前の贈与に係る税制には、大きくは相続時精算課税制度と暦年課税制度があります。ここでは相続時精算課税制度の概要と、暦年課税制度との比較においてのメリット・デメリットについて解説します。

制度概要

《贈与者》

この制度を利用できる贈与者は、60歳以上の父母や祖父母となっています。

《受贈者(贈与を受け取る人)》

受贈者は18歳以上の子や孫です。そしてポイントのひとつは、この制度を利用するかどうか選択するのはこの受贈者側の人だということです。例えば、祖父からの贈与分は相続時精算課税制度を利用する一方、父からの贈与についてはこの制度を選択しない(暦年課税制度を選択する)ということができます。

ただし、どちらの制度を利用するかを一度選択したらこれを取り消すことはできません。

《基礎控除》

税制改正により、2024年1月以降の贈与については相続時精算課税でも、毎年110万円の基礎控除が適用されるようになりました。これは相続時精算課税を選択したのが、2023年12月末以前の人であっても対象となります。

この制度には、2,500万円の特別控除があります。同一の父母または祖父母からの贈与については、累積贈与額が特別控除額を超えるまで控除ができます。つまり2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。

《税率と相続時精算》

贈与額が2,500万円を超えてしまうと、その超えた額について一律20%の贈与税が課されます。

その後、相続時に「基礎控除部分除きの累積贈与額と相続財産」に対して相続税をいったん計算します。それをもとに税金の精算を行うのが「相続時精算課税」ということです。

贈与税相当>相続税額 ⇒差額の還付

贈与税相当<相続税額 ⇒差額の納付

《暦年贈与との比較》

暦年贈与は、1年間に受けた贈与の合計額から、基礎控除額を控除した額に累進税率が適用されることになります。

(贈与額-基礎控除110万円)×税率―控除額

これに対し、相続時精算課税は、1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除額を控除し、贈与者ごとの累積贈与額が特別控除を超えた場合、超えた額に一定の税率が課されることになります。

[(贈与額―基礎控除(年)110万円)―特別控除2,500万円]×20%

※基礎控除 110万円/年は贈与を受ける人ごと

※特別控除 累積2,500万円は贈与をする人ごと

メリット

・ 贈与時にかかる贈与税をゼロ又は低く抑えることができる

・ 相続税の計算時に、贈与財産が贈与時の評価金額で算定される

デメリット

・ 一度、この制度を選択すると、年間110万円までの贈与が非課税となる「暦年贈与」が使えなくなる

・ この制度を用いて贈与した不動産について、相続時に「小規模宅地等の特例」は利用できなくなる。

・ 受贈者が、贈与を受けた年の翌年に申告をしなければならない。

相続に対する生前対策については、税金以外の点に関してもいろいろと考慮する必要があります。

遺言作成を含めたさまざまな生前対策については当事務所にお気軽にご相談ください。

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