海外在住の相続人がいる場合の相続手続きについて

遺言・相続

相続人の中に、海外に居住されている方がいる場合、遺産分割に際して、日本在住者だけで完結する場合とは異なる留意点が必要になります。また、令和7年5月11日付の日本経済新聞には、海外在留証明書のオンライン化についての記事が掲載されています。

ここでは海外在住者がいる場合の相続手続きとその留意点について解説します。

遺産分割時に海外在住相続人が用意すべき書類

相続人全員による話し合いによって遺産分割内容が決まったら、遺産分割協議書を作成することになります。以下については日本在住者とは異なる対応が必要となります。

1.サイン証明書 (日本での印鑑証明書の代わりになるもの)

遺産分割協議書には、相続人全員の署名・(実印での)押印と、相続人各人の印鑑証明書が必要となります。しかし日本以外の国では基本的に印鑑証明書が存在しません。

海外では契約書を締結する際には実印の代わりに署名(サイン)で行うことになりますので、遺産分割協議書についても署名(サイン)によって代替することになります。

この場合印鑑証明書の代わりに、相続人が署名した旨のサイン証明書を在外公館から発行してもらい、これを遺産分割協議書に添付することで対応します。

2.在留証明書  (住民票に代わるもの)

相続財産のなかに不動産がある場合、法務局で相続登記を行いますが、この登記申請には住民票が必要となります。

日本在住者の相続人の住所は戸籍附票もしくは住民票で対応しますが、海外在住者の場合は住所を証明する書類として、「在留証明書」が必要となります。

これまでは、この在留証明書は現地の日本領事館に赴いて、パスポートや運転免許証といった居住を証明できる書類を提示することによって申請・取得する必要がありました。

今後は以下で説明するとおり、オンライン発給が可能となります。

海外在住日本人の在留証明書オンライン化

2025年5月下旬より海外在住の日本人が在留証明書をオンラインで受け取れるようになります。(7月以降には出生・結婚などの証明書に広げるとのことです。)

現在は申請者が在外公館の窓口に出向いて紙の証明書を受け取る必要がありますが、政府の電子証明書(e証明書)のシステム整備によってオンライン発給が可能となります。

海外在住相続人とのやり取りのポイント

1.テレビ電話(ZOOM等)を活用した遺産分割協議のおすすめ

遺産分割の話し合いは本来対面で行うで行うのが望ましいですが、海外在住相続人の帰国を待って協議を行っていては相続手続きが滞ることになりますし、1回の話し合いで協議が完了するとは限りません。

たとえばZOOM等のテレビ電話を利用すれば、画面上で資料を共有することによって比較的スムーズに話し合いを行うことも可能となるでしょう。

2.書類のやり取りは極力メールで

書類のやり取りについては国外との郵便となると、国内にくらべてかなり日数を要することになります。

在留証明書がオンライン化されれば原本送付が必要なくなると思われますが、サイン証明書は引き続き原本を郵便で送ってもらうほかありません。

一方で、署名捺印をしてもらうような書類についてはPDFファイルでメール送信し、海外にいる相手方に印刷して署名・捺印してもらうやり方も考えらます。

相続手続きを極力スムーズに完結させるためにも、こうした工夫をしながら手続きを進めていきましょう。

このほか、相続に関してのお悩みごとは当事務所までお気軽にご相談ください。

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