贈与契約は、主として財産を次世代に譲り渡すことを目的として利用され、ある特定の財産を無償で譲り渡すという行為を指します。贈与契約書は、その行為を書面化した契約書のことです。
1.贈与契約とは
民法では贈与について、「当事者の一方が、ある財産権を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められています。
つまり贈与とは、贈与者(贈る人)と受贈者(受け取る人)との間での口約束のみであっても成立する契約ということになります。
しかし口頭のみの契約では、後日いろいろな問題が生じる可能性を残してしまいます。そこで書面による贈与とすることには以下の意味があります。
2.贈与契約書を締結するメリット
- 贈与の履行を確実にする
口頭による贈与は、財産の引き渡し前であれば撤回が可能であるのに対し、書面による贈与は契約書を作成した時点で原則として撤回できなくなるという違いがあります。
- 贈与内容の証明
贈与契約書を締結することによって、贈与の事実があったことを客観的に証明することができます。それによって相続が発生した際の遺産分割時にも、贈与の内容が反映された公平な遺産分割協議を行うことができます。
- 贈与税の申告や税務調査への対応
例えば相続税の税務調査において、「子にあげたお金は『名義預金』であって、実質的な持ち主は親ではないか」との疑義を持たれた場合であっても、契約書があれば実際に贈与が行われたことの証明ができます。
3.贈与契約書の書き方
「だれが」「だれに」
⇒契約書の冒頭に、贈与者と受贈者の氏名・住所を明記します。
「なにを」
⇒贈与する財産の内容は具体的に記載することが必要です。
・現金の場合はその金額。
・不動産の場合は、所在地・地番・地目・地籍などを明記します。
「条件」
⇒受贈者の負担など、条件付の贈与の場合はその内容を正確に記載します。
「いつ」・「どのように」
・贈与財産の引き渡し時期を明記します。
・贈与契約書の信頼性にかかわるため、押印は実印のほうがよいです。
・受贈者が未成年の場合は、親権者の署名押印も必要です。
・不動産の贈与については収入印紙を貼り付ける必要があります。
・贈与契約書は2通作成し、贈与者・受贈者双方が保管できるようにします。
・贈与契約書を公正証書で作成することによって、証跡としての信頼性を万全なものができます。これによって契約書原本は公証役場に保管されることになりますので、契約書を紛失するリスクも回避できます。
4.贈与契約書のイメージ(金銭の贈与の場合)

年間110万円を超える贈与を受けた場合には、翌年の3月15日までに贈与税の申告が必要となりますので、注意しましょう。
贈与を行う際には、必要な事項を適切に記載した贈与契約書を作成し、効果的かつ円滑な財産移転の第一歩とすることがおすすめです。
贈与契約書に関するご相談は当事務所までお気軽にご相談ください。
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