法定相続人についての解説

遺言・相続

被相続人(亡くなった人)の財産を誰がどれだけ受け取る権利があるのか、について正確に知っている人は少ないものです。ここでは相続人の範囲や法定相続人となりうる人、相続人の割合について解説します。

相続人とは「実際に財産を相続する人」を指します。

これに対し、法定相続人とは民法で定められた、「被相続人の財産を相続する権利を持つ人」です。

そこで誰がどれだけ遺産を引き継ぐのかということになりますが、まず遺言の有無によってそれが異なってきます。

1.遺言書がある場合

相続においては、原則として遺言書の内容が優先されることとなっています。(民法964条)

遺言書で「誰に、何を、どれだけ」の財産を相続させると残されていれば、その意思が優先されるということです。

ただし、遺言書の形式は民法の規定に沿った方式であることが必要です。

また、遺言書に記載されていても法定相続人の遺留分(法定相続人が一定割合の財産を確保できる権利)を侵害できないことには留意する必要があります。

※遺留分の権利がある人

・配偶者

・直系卑属(子ども、その代襲相続人)

・直系尊属(両親、祖父母)

具体的な遺留分は以下のとおりです。

配偶者のみの場合・・・配偶者2分の1

配偶者と子ども2人・・・配偶者4分の1、子どもそれぞれ8分の1

配偶者と父母・・・配偶者3分の1、父母それぞれ12分の1

配偶者と兄弟姉妹・・・配偶者2分の1

子どものみ・・・子ども2分の1

父母のみ・・・父6分の1、母6分の1

2.遺言書がない場合

遺言書がない場合、あるいは遺言書に書かれていない遺産の相続については、民法では「誰が相続人になれるのか」を定めており、これを「法定相続人」といいます。

以下では法定相続人の範囲と順位について見ていきましょう。

・配偶者は常に相続人となります。

・それ以外の順位は以下のとおりです。

第1順位:子や孫、ひ孫(直系卑属) ※子がすでに亡くなっていた場合は孫が代襲相続

第2順位:父母、祖父母、など(直系尊属)

第3順位:兄弟姉妹 ※すでに亡くなっている場合は甥姪が代襲相続

遺言がない場合、相続人となれるのは、「配偶者」「直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹の血族」と民法で定められています。

3.法定相続分

以下では相続が発生した場合に、具体的にどれだけの割合で法定相続人が遺産を受け取る権利があるのかを見ていきます。

配偶者と子どもがいる場合・・・配偶者2分の1 子ども2分の1

配偶者と父母がいる場合・・・配偶者3分の2、父母(直系尊属)3分の1

配偶者と兄弟姉妹がいる場合・・・配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

・子どもや父母、兄弟姉妹が複数いる場合は、それぞれの法定相続分を人数で割って算出します。

・配偶者がいない場合は、より上位の相続順位にいる人がすべて相続することになり、同順位内で複数人いる場合はその人数で均等に配分します。

⇒例えば、配偶者がいなくて、第1順位の子どもが2人いる場合は、子どもが2分の1ずつ相続することになり、第2順位、第3順位の人たちは相続人とはなりません。

4.相続人となるのか迷うケースについて

<子どもがすでに亡くなっていて、孫がいる場合>

被相続人の子どもがすでになくなっている場合は、その子ども(被相続人の孫)が相続します。これを代襲相続といいます。

<第3順位の兄弟姉妹が亡くなっていて、甥や姪がいる場合>

第1順位である子や子の代襲相続人となる直系卑属がおらず、第2順位の父母や祖父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合、第3順位である兄弟姉妹が法定相続人となります。この兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子ども(被相続人の甥や姪)が代襲相続人となります。

<元配偶者との子どもがいる場合>

元配偶者との間に子どもがいる場合、その子は法定相続人となります。

もし被相続人が再婚をしていて現配偶者との間に子どもが生まれていたとしても、元配偶者との子が被相続人の実子であることには変わりはないため、相続権がなくなることはなく、子の間で法定相続割合に差が生じることはありません。

<養子がいる場合>

民法の改正によって、養子も実子と扱いが同じとなりましたので、相続順位は第1順位、かつ法定相続分も実子と同じになります。

なお普通養子は実親との相続関係が継続されるため、養親・実親どちらの相続人にもなりますが、特別養子の場合、特別養子縁組がなされた時点で実親との親子関係はなくないますので、実親の法定相続人にはならず、特別養子の実親に相続が発生したとしても、その特別養子に相続権はありません。

5.最後に

相続が発生した場合、遺言書がなければ相続人は遺産分割について協議することになります。相続人全員が納得する分割内容で合意できない場合、親族間のトラブルになる可能性もあります。

そうならないよう遺言書作成を検討することをお勧めします。

遺言書があれば遺言者の想いに沿った内容で財産を引き継ぐことができます。

遺言書の作成については当事務所にお気軽にご相談ください。

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