負担付遺贈について

遺言・相続

負担付遺贈とは、遺言によって財産を相続人以外の人に譲り渡す代わりに、財産を受け取る人(受遺者)に一定の負担をさせる遺贈のことです。遺言者にとって気がかりなこと(例:妻の扶養、ペットの世話、お墓の管理)を財産の受遺者に役割として託すことで、自分の意思や希望を実現させる方法とも言えます。

負担付遺贈の具体的内容やその方法を用いる際に気を付けるべき点について見ていきましょう。

1.負担付遺贈の例

[ケース1]

自分が亡くなった後の配偶者の生活に不安がある場合、例えば経営する事業の不動産、什器備品、営業権をすべて譲る代わりに、介護が必要な配偶者の世話をしてもらう方法が考えられます。

[ケース2]

ひとり暮らしをしていてペットと生活していると、自分がペットよりも先に亡くなったときに、ペットの面倒をどうするのかが問題になります。このようなときに、ペットの世話を条件として財産を遺贈する方法が考えられます。

[ケース3]

住宅ローンが残る不動産の承継についても、負担付遺贈の方法が利用できます。

具体的にはローン残金の返済を条件として、当該不動産を譲り渡すことが考えられます。

※このケースにおいては、「〇〇に、自宅不動産と住宅ローンをそれぞれ相続させる」という内容を遺言書に残し、不動産とそれに対しての債務を両方とも相続させるという方法もあります。

2.注意点

・負担付遺贈は放棄も可能

負担付遺贈は、遺言者による一方的な意思表示でなされるものですが、他方で、受遺者にはその遺贈を放棄するという選択権があります。

よって、受遺者が負担付遺贈を放棄した場合、遺言者の意思や希望がかなわなくなってしまいます。

・負担付遺贈の負担上限

遺贈された財産に対して負担が重すぎると受遺者にとって酷なことになってしまいます。そこで民法第1002条において、「遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ」として負担の金銭的な上限を定めています。これによって仮に負担内容が金銭的に財産価額を上回るような場合、受遺者はその超過分について責任を負う必要がなくなります。

・受遺者の義務不履行

可能性としては、受遺者が負担付遺贈を承認しながら、財産のみ受け取って負担義務を履行しないことも考えられます。

このようなときにも、直ちに遺贈自体が無効になるということにはなりません。

受遺者の義務履行がなされない場合、相続人もしくは遺言執行者はまず、期限を定めて負担を履行するように催告し、それでもその期限内に負担履行がなされない場合には法的手段に基づいて遺贈の取り消しを求めることが可能となります。

3.負担付遺贈実施時に押さえておくべきこと

・遺言者と受遺者の話し合い

 負担付遺贈は遺言者の一方的な意思表示で可能なものではあります。しかし、受遺者が遺言者の死後に負担付遺贈のことを初めて知るようなことになると、「自分がその負担義務をきちんと履行できるのか」について俄かに判断がつかなかったりして、承認すべきか否かを逡巡することも十分考えられます。

このようなことがないよう、遺言書作成の前に、遺言者が受遺者とその内容についてじゅうぶんに話し合いをして、受遺者の事前の同意を得ておくことが重要です。

・負担と財産のバランス

上述のとおり、受遺者にとって負担が過大であると負担付贈与を放棄される可能性があり、また過大な部分については受遺者には履行義務が生じません。

こうしたことを避けるべく、負担内容と遺贈する財産がバランスの取れたものとなるよう、受遺者とよく相談をしておくことが重要です。

・遺言者の指定

遺言内容を実現するために手続きを行う人を遺言執行者といいます。

遺言執行者を指定することが遺言書の要件というわけではありませんが、これによって負担付遺贈についても手続きを円滑に進めやすくなります。

相続の手続きは複雑でわかりにくいところがありますので、ご不明な点はまずは当事務所にお気軽にご相談ください。

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