遺産分割での預貯金の分け方には大きく2つのステップがあります。以下でその流れについて説明していきます。
- 遺産分割での預貯金払戻しの前提
預貯金は原則として、遺産分割後にしか払い戻しができません。
つまり相続人全員の合意成立後にはじめて、払い戻しが可能となります。
以前は、遺産分割前でも単独でそれぞれ法定相続分の範囲までは金融機関で受け取り可能でした。
しかし現在では、預貯金も遺産分割の対象と解されることとなり、上記のとおり遺産分割後にしか払い戻しができなくなっているのです。
これでは、たとえば被相続人の葬式費用など、差し迫って必要なお金を預貯金で賄うことができなくなるため、民法改正によって、預貯金の仮払い制度が設けられました。
<預貯金の仮払い制度>
・遺産分割が終了する前でも払い戻し可能。
・払い戻しできる上限は、相続開始時の預貯金残高の3分の1に法定相続分を掛けた金額。
(ただし、ひとつの金融機関で払い戻しを受けられる金額は、法務省令で定める150万円が上限。)
・必要書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本等、または認証文が付与された法定相続情報一覧図
- 印鑑登録証明書(金融機関によっては発行後3か月以内等の条件あり)
2.相続時の手続き
相続による払い戻しや口座の名義変更をする場合には、どの財産がどれだけ、誰に相続されるのかについて、相続人間で合意したことを証明する書類が必要となります。基本的に必要となるのは相続人全員の実印が押印されている遺産分割協議書とともに、そのほか金融機関所定の文書等です。
遺産が預金しかない場合、且つ、特に問題なく相続人全員の同意がなされていれば比較的すみやかに預貯金の解約はできます。その際、解約したお金をいったん代表相続人が受け取って、その後に相続人間の話し合いで分配すれば遺産分割は終わりますので、金融機関あての所定の書類のみ提出すれば、遺産分割協議書も不要となる場合があります。
3.預貯金の分け方
ではここからは、遺産分割での預貯金の分け方について見ていきましょう。
まずは、預貯金の配分(誰がいくらもらうのか)を決める必要があります。
この分け方を決めるために行うのが、「遺産分割協議」です。
遺産分割において、相続人は基本的に自由に相続財産の分割方法を決めることができます。※ただし、相続人には相続財産を一定割合で受けられる権利(これを遺留分といいます)があるため相続人の合意がない限り、これを侵害することはできません。
「遺産分割で自由に決めればよいと言われても、どう決めてよいかわからない」という場合には、法定相続分を参考に当事者間で取り分を相談するのがよいでしょう。
法定相続分とは、民法で定められた各相続人の取り分のことであり、相続人の組み合わせによって以下のとおりとなっています。
《法定相続分》
相続人 のパターン | 配偶者の取り分 | 子供の取り分 | 直系尊属 の取り分 | 兄弟姉妹 の取り分 |
配偶者と子供 | 2分の1 | 2分の1 | なし | なし |
配偶者と親 | 3分の2 | ― | 3分の1 | なし |
配偶者と 兄弟姉妹 | 4分の3 | ― | ― | 4分の1 |
配偶者のみ | 1(全額) | ― | ― | ― |
子供のみ | ― | 1(全額) | ― | ― |
親のみ | ― | ― | 1(全額) | ― |
兄弟姉妹のみ | ― | ― | ― | 1(全額) |
- 子供が複数人いる場合は、「子供の相続分」を人数で均等に分割します。親や兄弟姉妹も同様に人数で均等に分割します。
- 亡くなった方の子供や兄弟姉妹が、亡くなった方よりも先に死亡している場合は、「代襲相続」が発生し、それらの人たちの子供が代わりに相続することとなります。
例えば、遺産の預貯金の金額が2,000万円で、相続人が配偶者と子供2人の場合は、配偶者の法定相続分は2分の1なので、2,000万円×1/2=1,000万円が配偶者の法定相続分となります。
子供は2分の1の1,000万円を2人で分けるので、それぞれ500万円ずつが法定相続分となります。
相続の手続きは複雑でわかりにくいところがありますので、ご不明な点はまずは当事務所にお気軽にご相談ください。
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